>>Penguinlandの作曲講座>>番外編:ヒットするか否かを分析する驚異的ソフト

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Penguinlandの作曲講座 番外編:ヒットするか否かを分析する驚異的ソフト

まだ3回しかやってないのに、いきなり番外編です。
作曲をする方は知っておいた方がいいと感じた情報がありましたので、
作曲講座からはちょっと脱線しつつも書くことにいたしました。

みなさんは、ヒットするか否かを科学的に分析するソフトウェアの存在をご存知でしょうか。

「まさかそんな夢みたいなこと・・・」などと思われる方も多いと思いますが、
テクノロジーの進歩というのはすごいもので、
一昔前は夢だったようなことがどんどん現実化するのと同じように、
そのようなソフトウェアが登場し実用化もされています。

分析されて発表される音楽なんて味気ないという意見も出てきそうですが、
好むと好まざるとにかかわらず、今ヒットしている曲の一部は、
すでにそのソフトウェアのふるいにかけられて発表されているらしいのです。

これらのソフトウェアは「ミュージック・インテリジェンス」(以下、MI)と呼ばれます。
MIは、スペクトラル解析という手法で楽曲をあらゆる要素で分解します。

リズム、メロディ、ハーモニーといった音楽の基本要素はもちろん、
小節数、音域、音響、ベンド(ビブラートなどを含む)などなど、
楽曲を30〜70程度の要素において数値化して分析を可能にします。
そして既存の曲の分析結果によると、
ベートーベンの名曲から昨今のあらゆるヒット曲に至るまで、
名曲やヒット曲にはある種の数値傾向があるらしいのです。

つまり楽曲をMIにかけて数値化し分析すれば、
その曲がヒットするか否かが予想できるというわけです。
おまけに、出来上がった曲の改善点をも指摘することができるようです。

こんなすごいソフト、作曲をする人ならぜひ手に入れたいですね!
残念ながらすごいソフトだけにいずれの会社も販売はしてなく、
解析を請け負うサービスを提供するという形をとっています。
年間契約(約10万ドル)で無制限に曲を分析してくれるとのこと。
10万ドルということは、1ドル=120円とすると1200万円。
素人にはとても手が出る金額ではありませんが、
大手レコード会社にとってはむしろ安い買い物ではないでしょうか。

音楽ビジネスはリスクの高いビジネスです。
販促経費を多大にかけた結果ヒットしなかった曲も少なくないはずで、
ヒット曲を高い確率で推定できるとあれば、
これまで無駄にしていた販促経費を格段に低くすることができます。
こんなすごいサービスをレコード会社が使わないわけがありません。

こういうサービスを使う場合、やはりその信頼性が核となります。
MIを提供する会社は、すでに数々のヒットを予測した実績を公表しており、
例えば、世界中で大ヒットし日本では CM にもなって話題になった、
James Blunt の You're Beautiful についても、
MIでその大ヒットが予測されたというのです。
この1曲に限らず他にも多くの予測実績を残していて、
すでに信頼性は確立されているようです。

そんな背景から、ユニバーサル・ミュージックやソニー・ミュージックなど、
大手レコード会社もすでにMIを実用レベルで活用しているようです。
プロデュースする曲を決める段階でデモテープを解析したり、
レコーディングやミックスダウンが終了した後に解析して修正するなど、
音楽制作プロセスに組み込まれているともいわれています。

今の音楽の制作現場はスゴイことになっていますね。
MI提供会社は収益が上がる一方とか顧客は後を絶たないと語っており、
これからメジャーデビューを目指す人たちは、
このMIの洗礼を受けずにデビューは叶わないという時代になりつつある、
と考えてもいいのかもしれません。

こうなると「ヒット曲が画一化、凡庸化されてしまうのではないか」とか、
「自分の音楽を数値化されてたまるか!」という反発の声が上がりそうですが、
ここで冷静に考えてみましょう。

提供会社によると、数値化された曲はあらゆるジャンルの数百万曲に及び、
画一化・凡庸化の懸念はないと説明しています。
また、改めてよく考えてみれば、
コネがモノを言ってきたこれまでの音楽業界の方がむしろ歪んでいて、
従来のヒット曲が画一的かつ凡庸的と捉えることもできます。

つまり、大手レコード会社が分析サービスに頼れば頼るほど、
制作側の偏見で見捨てられてきた有能なアーティストや、
ヒットするわけがないとされてきたジャンルが日の目を見るかもしれません。
また、コネがない人にもチャンスが訪れる可能性が出てくるかもしれません。

それらのことを考慮すると、
MIの登場は音楽界を変革する画期的な出来事なのかもしれない
と私は思えてくるのです。

アマチュアミュージシャンを勇気づけてくれるエピソードもあります。
フランスのノルマンディー地方の片田舎に住む43歳の Frederic Monneron 氏は、
独学でギターとピアノを習得したという馬術書の編集者

そんな彼が、失恋をきっかけに自宅のあり合わせの機材で12曲を作曲・録音し、
冗談半分にその曲をMIで分析してもらったら、
恋愛と政治を一緒にした風変わりな歌詞にもかかわらず「ヒット確実」との分析結果!
フランスのレコード会社が北米と欧州でそのCDを20万枚発売するに至りました。

そのCDは Fred's Pentagon というバンド名義でリリースされ、
購入は不可能ながら、こちらで全編を聴くことができます。
分析結果の通り、確かにヒット性の高そうな曲が聴けます。

こんなパワフルな機能を持つMIですが、日本での認知度は非常に低く、
ネット上の日本語の情報も、残念ながらほぼ皆無に近い状態です。
日本の音楽業界では、MIについては言及しないとの暗黙の了解になっているとかいないとか。
もっとも、レコード会社の販売促進の戦略がからむ面ですから、
一般に公表するようなことではありませんが、
国境のないインターネットを介して、日本での認知度が高まる可能性は大いにあります。

話がそれましたが、MIが普及した場合、プロ志向の作曲家がすべきことは、
プロデューサーのご機嫌をとったり、彼らに気に入ってもらえる曲を創るのではなく、
MIでヒットするという分析結果を残す曲を創ることが、最重要課題となります。
MIは過去の名曲やヒット曲のデータから未来のヒット曲を予測するわけですから、
ヒット曲を作りたいなら、今の流行を真似て曲を作るのではなく、
過去の名曲を研究するのが最善の方法といえるでしょう。

また、MIが浸透してこの傾向が進行すればするほど、
アマチュアとプロの境界線が薄れていくことになるのではないでしょうか。
多くのアマチュアミュージシャンがプロに近い土俵に上がったとき、
そこでモノを言うのは、「いかに稀有な存在かをアピールする個性」です。
プロ志向の作曲者はそれを肝に銘じておくことが重要になります。

「数値の分析結果などに惑わされずに、我が道を行くのみ」
と考える芸術家肌の方もいらっしゃると思います。
こうしてMIを紹介する私ですが、むしろそういう人たちを応援します。
個性というのはそういう強い意志の中から生まれるものですし、
そして、そうやって築き上げた個性の中から、
MIで名曲と診断される曲が生まれる可能性もありますから。

ヒットを狙って曲を作る場合も、我が道を行く場合も、
過去の素晴らしい曲の数々は、作曲研究の貴重な資料であることに変わりはありません。
従って、いずれの道を取るにしてもやるべきことに大差はないと私は考えます。

最後に、今回の参考資料(英語)、MIの提供会社のサイトを以下に掲載します。
また、MIの提供会社が最近、Web経由で個人向けにサービスを始めたようですから、
英語に自信ある方は、分析サービスを試されてはいかがでしょう!

■ 参考資料

 ・ COURRiER Japon (私がMIを知るきっかけとなる記事が掲載されていました)

 ・ THE ECONOMIST - Sounds good? (COURRiER Japon の記事の元ネタかも)

 ・ BBC - Making hit music into a science

 ・ YouTube - MUSIC SCIENCE


■ MIサービスを提供する会社

 ◎ Polyphonic HMI
   Webサービス: Hit Song Science(4ヶ月無料プロモーションをやっています)

 ◎ Platinum Blue
   Webサービス: Music Xray
   Basic Xray、Basic Plus Xray、Full Score Pro Xray、Full Service Pro Xray と、
   レベルによって4つのサービスを展開しており、
   一番レベルの低い Basic では1曲につき10ドルで分析してくれるようです。

いずれもヒットすることを保証するようなものではありませんので、
早とちりしないよう、解説をよく読んでご利用ください。





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